メイドインジャパンの秘密

「Made in China」じゃ売れなくなったから「Made in PRC」で売ろう!というギャグだかホントだかわからない話があるらしい。

 政権交代民主党政権になった時、中国製は期待されていた。あのころはリーマンブラザーズがなんちゃらでアメリカに頼った生活を改めようという考えが広まっていた。企業は中国への市場展開も考えていただろうし、オリンピックで中国が活性化すれば製品のクオリティも上がると考えていたのだろう。それはかつての日本製がやはり粗悪品のイメージをもっていながら高度成長と共に良品のイメージをつけていったことの再来を期待していたのだろう。*1しかし、現実はメイドインチャイナが増えただけで、中国製は第二のメイドインジャパンになれなかった。それは中国人が「あるもの」を持っていなかったからだ。……いや、この書き方はよくないな。なぜならばそれは西洋人も持っていないものだからだ。そう、日本人が持っているメイドンジャパンの秘密、それは「和の思想」である。

 「和(わ)」というのは「調和」や「平和」のように「なごやか」な言葉をイメージするが、一説によると「環」や「輪」と同じ語源であるという。つまり円形をあらわし、和とは人々が手をつなぎ円形の「輪」となっている状態である。この「和」は集団の状態をあらわし、集団から大きくはみ出すほどの悪行、責められたり非難されるような行為を「咎(とが)」という。咎は鋭いイメージの「尖(とが)った」と同じ語源だという。さらに日本人を語る上で「恥(はじ)」も外せないが、この恥とはまさにこの円にいる人々から外(はず)れてしまう事を意味する。ちなみに隅っこの事を端(はじ)っことも言うね。はねのけたり、ものすごい勢いで放つ事を「弾(はじ)く」と言ったりもする。

和の文化 - Wikipedia
ウィキペディア(2014/1/16)には「日本民族の文化の本質は、個性重視とする文化ではなく、集団の秩序と安寧、また礼儀と作法を重視した文化である。」とあり、確かにそう認識している人間もいるかもしれないが、私は違うと思う。和の思想はいわゆる「ぼっち」にも可能であり、例えば「おたく」も持っているのだ。これを聞いて「ええ?おたくってどう考えてもHENTAI文化を世界に送り出した日本の恥でしょ?」と思うかもしれないが、おたくが置かれている状況が「わ」からはみだしているだけで、おたくの思い描いている世界はむしろ「わ」に包まれているのだ。

 例えば「萌え」である。日本人の手にかかれば戦艦だろうが、独裁者だろうが、邪神だろうがみんなかわいい美少女キャラに生まれ変わるのだ。戦艦も独裁者も邪神も実物を知っていればどれも血なまぐさく、あきらかに集団からはみ出したものだが、おたくたちはそんな「はみ出し者」から尖った部分を取り除き「みんなから好かれる存在」に生まれ変わらせているのだ。美少女キャラは漫画的な二次元のイメージがほとんどだが、マンガのキャラクターは実在の人間と比べると顔の凹凸が少なく、目もリアルに描くならば横長のはずだが、実際には縦幅が実際よりも大きく描かれがちだ。つまり描かれ方が円を中心とした「和」に準じたものになっているのだ。

 仕事、文化だけでなく、遊びにも見える和の思想。例えば、ままごと。欧米版ママゴトともいえるTRPGがGMという審判や仲介者を必要としているのに対し、ままごとは演者自身の空気を読む力によって成り立っている。TRPGはキリスト文化圏の遊びで、ルールブック=聖書、GM=神父が間にいる。それはプレイヤーだけでは暴走を起こしてしまう可能性があるからで、暴走を起こした場合はGMがそれを抑えるのである。一方のままごとは暴走すら楽しんでアドリブで続けてしまうのだ。このように遊びからも和の思想を取り入れている。理屈ではなく感覚で覚えていくのだ。

 最後にメイドインジャパンの世界では有名な「カップめん」の話をしよう。前に日清食品の社長秘話みたいなのが特集でテレビでやっていたのでそれで覚えているんだけど、即席食品という(はみだしもの)をどう売ろうか悩んでいたところラーメンという(わにうけいれられているもの)と組み合わせヒットさせたらしい。さらにいうとカップ麺の創業者は麺を作ったことがなかった。ずぶの素人が一から国民食を作り上げようとしたわけだ。日本人に天才肌はいないという事実。試行錯誤の末、みんなが納得できるラインを探す能力――それがメイドインジャパンの秘密だ。

つづく

*1:バックトゥザフューチャー3では日本製と聞いて過去の人物は「故障する」といい、未来から来た人間は「日本製は最高さ」と言っていたりする。