その7「悪魔はNG」

 女性の身体に関する規制はとりあえず前回で終了です。*1それでテンションが下がって更新間隔がズレましたが、まだまだ規制に関する話題は終わりません。

「文化が滅びる」――都条例「非実在青少年」にちばてつやさん、永井豪さんら危機感 - ITmedia NEWS

 東京都の「青少年育成〜」が話題になった時、反対派として「永井豪」や「ちばてつや」をはじめとして多くの漫画家、出版社が現れました。永井豪は「キューティーハニー」とか「けっこう仮面」みたいな路線が好きなので、一般人からしたら「あぁ、エロジジィが規制ハンターイ!って言ってるのね」という認識なのかもしれません。が、仮に彼がエロジジィだったとしてもちばてつやまでもエロジジィの仲間にしてしまうのはどうだろうか?と考えたものです。

 そもそもこの話題をわかりづらくしてしまったのは永井豪本人でしょう。マスコミが彼を紹介するとき「ハレンチ学園の〜」と紹介し、永井自身も規制問題に関してはハレンチ学園の件を真っ先に挙げますが、私から言わせると彼の代表作はハレンチ学園ではありません。「デビルマン」です。表現規制が起こるとハレンチ学園のような作品が危ないと考える人は多いのですが、むしろデビルマンの方が危ないです。規制を行っているのがキリスト教徒(あるいはキリスト教的な価値観の人々)である事は既に説明しました。デビルマン(特にマンガ版)はそんなキリスト教徒からするとありえないシーンの連続で、「OKの出せるページがひとつもない」作品であると言えます。だからあなたが規制賛成派なのか反対派なのか分からない場合はデビルマンの単行本を集めて読めばよいのです。これを見て「子供にはきつい。見せるべきではない」と考えるのなら規制賛成派で、「この漫画は素晴らしい。後世に残すべきだ」と考えるならば反対派だという事です。

OCG>>レッサー・デーモン OCG - Google 検索
TCG>>Lesser Fiend - Google 検索

 というわけで、悪魔(devil)も規制対象です。特にヤギの頭を持った「バフォメット」とかが有名ですね。こういうヤギの角を生やした人間みたいなのを描くと「悪魔崇拝」と受け取られます。ためしに「イルミナティ」という言葉でググっていただきたい。我々日本人は全然知らない「とあるモチーフ」を作品に持ち込んでしまうと、これは悪魔を崇拝するものたちの陰謀だ!洗脳だ!みたいな事を言われてしまいます。本当にそんな悪魔崇拝の組織や団体があるのかは知りませんが、キリスト教徒を敵に回したくないのなら悪魔的なものは作品に描いてはならないという事でしょう。

OCG>>魔人 ダーク・バルター - Google 検索
TCG>>Dark Balter the Terrible - Google 検索
色を多少変えてもツノはダメみたいですね。

OCG>>終焉の精霊 - Google 検索
TCG>>Doomsday Horror - Google 検索
羽に関してはそんなに厳しくないみたいですね。

 表現規制とクールジャパンは表裏一体でした。海外(特に欧米)と商売したいんだったら、彼らの価値観に合わせて、自分達は平気だけど外国人からしたら顔をしかめられるような表現を削っていこうというのがそもそもの出発点です。日本人にとっては平気なエロでも海外では異常だから規制しよう。そういう事でしょう。では、この悪魔規制はどうでしょうか?日本人にとって悪魔的なキャラを描いたとしてもそれは問題にはなりません。描くものと信仰があんまり関係ないのが日本人です。もし、最初からキリスト教的な価値観でものづくりをしていたら、「デビルマン」という素晴らしい作品はヴィジュアル的にもストーリー的にも存在できなかったでしょう。

 欧米的、キリスト教的価値観がワールドスタンダードな現代ですが、本当に女性の肌を隠す事が正義ならばイスラム教徒が最もその価値観を守っているのだから全世界にイスラム教徒のヒジャーブを広めるべきでしょう。しかし、そんな事をすればおそらく欧米の男性だけでなく、女性も「女性の自由の侵害だ!」と怒るのではないでしょうか?イスラム教からすれば欧米の顔や腕を露出した女性はハレンチでしょうが、欧米からすると全くエロくなく、ただのオシャレポイントにすぎません。でも、これって日本で起きている規制問題と何が違うのでしょうか?結局みんな、「自分達の民族の価値観が正しい」と思っているに過ぎません。

 国際交流が豊かな時代ですから、海外の価値観を知り、相手の嫌な事はしないという事も大切な事です。しかし、だからこそとある地域でしか主流でない考えに寄り添うのはおかしいと言えます。中東と欧米とそして日本という全く違う文化圏があり、それぞれの文化を知った上で作品の倫理について問うべきであり、それは自分の感覚とか主観だけで分かる事ではありません。しっかりとした研究と議論があってはじめてワールドスタンダードが作られるのです。

 というわけで、今後はそれを規制されたら映像だけでなく、物語的にも何もできなくなっちゃうものについて挙げていきましょう。それでは。

*1:カンタンに脱げちゃいそうな服装もダメみたいな細かい点もあるのですが、説明がめんどいので省略。