6時間目「いつか君をすげぇ奴にするんだ」

 いやー、やっぱ面白いな、パックマンは。え?一人で楽しんでないで授業を始めろって?まぁまぁ、そう言わずに。ほら、グーグル先生にたのめばパックマンが遊べるぞ。

30th Anniversary of PAC-MAN

 おーい、いつまで遊んでいるんだー?授業をはじめるぞー。さて、みんなはパックマンって知ってたか?え?知ってる?――そうかそうか、スマッシュブラザーズにゲスト出演しているのか。聞くところによるとパックマンは世界的に見ても知名度が高くて、ギネスブックには「最も成功した業務用ゲーム機」として認定されているほどだ。というわけで、今回はそんなパックマンの何が革新的だったのかという事を先生なりに結論づけていこうと思う。

1979年夏にピークを迎えた『スペースインベーダー』ブームの影響により、ゲームセンターには戦争を題材としたシューティングゲームが多く出回るようになった。「これでは女性が入りづらいのではないか」と危機感を持った岩谷徹により1979年3月、ゲームセンターの雰囲気を殺伐としたものから、和やかな場所へと転換することをひとつの方向性として企画。女性やカップルをメインターゲットに絞った点も当時のゲームとしては目新しかった。

それまでに市場に出回っていたゲームとは異なり、無個性に近かったゲーム登場キャラクタに対して明確な性格づけを行ったことが画期的であった。また、基本コンセプトとなった「食べる」というキーワードは女性であれば食べることに興味を持つだろうという点からヒントを得たものである。女性でも遊びやすくなるよう、ゲームの仕様を決定するにあたって以下のような配慮が行われた。

  • 4方向レバーのみを採用し、ボタンは利用しない
  • ゲームによる緊張が長引かないよう「コーヒーブレイク」というデモアニメーションを挿入
  • モンスターをカラフルなものとし、目を引くように配慮

結果として企画者の狙い通り、女性客を引き込むことに成功した。

(引用:パックマン - Wikipedia

 作者の岩谷徹(いわたに とおる)さんによると「ゲームセンターは男の遊び場でイメージが悪くて、女性やカップルを取りこむことで明るい場所にしたかった」事が「なぜ作ろうと思ったのか」という動機らしい。ただ、日本の文化や国民性から考えるとパックマンでなくても、いずれだれかが「女性向け」や「戦争を題材としない」ゲームを作る事になっただろうと考えられる。

 だから、別の部分に注目しよう。先生が注目するのは「パワーアップアイテム」だ。パックマンにおいては点めつする丸で表され、「パワーエサ(パワークッキー)」と言われている。このエサを食べるとパックマンは元気になって、これまで追いかけ回されていたお化けを逆に「食べる事が出来る」ようになるんだ。

 これにより、パックマンは「お化けに追いかけられるゲーム」から「お化けを追いかけるゲーム」に変わるんだ。これまで手出しの出来なかった相手に思いっきり逆しゅうできる。正直、スカっとするよな。ただし、このパワーアップは一時的なものだから、しばらくするとまた「お化けに追いかけられる」ようになってしまう。つまりパックマンとは「追いかけられる」状きょうと、「追いかける」状きょうが交ごにやってきながらゴールを目指すゲームと言える。これがパックマンの面白さを支えているんだ。

 例えば、パワーアップが存在せず追いかけられ続けるゲームだったらどうだろうか。お化けに見つからないように歩き回りながらエサを集める――まるでホラーゲームだね。これじゃあ「気持ちよくない」よな。逆に最初からパックマンが強くてお化けを食べられる状態だったらどうだろうか?……あっという間にゴールしてしまってつまらないはずだ。
 
 スペースインベーダーで自分が操るほう台はパワーアップしない。ルールが一定なんだ。だからプレイヤーの実力がないと勝つ事は難しい。けれどもパックマンにはパワーアップがある。細かな操作が苦手でお化けにすぐ追いつかれてしまうようなプレイヤーでも、パワーエサを取る事によってルールが変わる。追いつかれてもOKになるんだ。ルールが逆転すれば苦手なやつでも勝てるようになるよな?これがゲーム初心者にもパックマンが親しみやすい理由でもあるんだ。

 パックマンはキャラクターの変化によってルールも変化するという流れを作り出したんだ。いっぱん的にゲームのルールはジャッジや出題者がにぎっている。けれどもキャラクターが登場するゲームにおいてはゲームのルールはキャラクターが作り出す事が出来るんだな。この「パワーアップしてルールを変えるキャラクター」というのも今後のゲームを語る上で重要な要素だ。覚えておこう。

おーし、今日はここまで!解散!