仏像は古事記よりも古くから

 ガンダーラといえばゴダイゴが唄うテレビドラマ版西遊記のテーマソングである。しかし、三蔵法師が目指していたのは天竺(インド)でありガンダーラは厳密にいえば中継点でしかない。

参考:ガンダーラ (曲) - Wikipedia

 Wikipediaによるとガンダーラ美術の持つエキゾチックなイメージが欲しくて、それがそのままタイトルになったらしい。ここで出てくる「ガンダーラ美術」とは一言で言えば、「東洋の美(思想など)と西洋の美(技術)の融合」によって生まれた美術であり、例えばウェーブヘアーの仏像などが作られる。それまで仏教徒の間ではブッダの姿を模る事は畏れ多いと作られていなかったが、ヘレニズムの影響を受けたイラン系の王朝(クシャーナ朝)によって広まることになる。ギリシャもエジプトも神や人の像がたくさん作られていたように、像を作る技術があったわけでそれがガンダーラの地に伝わったわけである。

 こういった文化の衝突は仏教自体にも変革をもたらす。信仰対象が目に見える存在になったことで自分との対話から仏という偉人を崇めるものに変化していき、「大乗仏教」という考えが生まれる。これは僧侶が修行を積むことで得た悟りによって一般人である大衆が救われるという考え方である。大乗というのは大きな乗り物という意味で、これに対しスリランカなどの南伝仏教は修行している本人しか救われないので小さな乗り物(小乗仏教)とバカにされてしまう。*1バカにされた方は当然気分がよくないので上座部*2仏教を名乗った。

 北伝仏教はほぼ大乗仏教と言えるので、シルクロードを通して日本へやってきた仏教は大乗仏教である。空海最澄大乗仏教に分類される。そして重要な事は日本に伝わった仏教とはヘレニズムの影響により出来たものであり、この仏教とともにヘレニズム文化というものは日本にやってきているのだ。仏像の伝来は紀元後約500年に百済から送られてくるわけだが、これは日本書紀古事記が出来るのよりも古いのである。つまり日本神話がまとめられるよりも昔に来ているのである。だから太陽神ラーや太陽の擬人化の要素をアマテラスが持っていたとしても何も不思議ではないのだ。

 さて、ここまでで仏教の大まかな流れは説明できた。ここからはいよいよ日本における仏教について語っていこう。日本において道教儒教も庶民には浸透しなかった。一方で仏教は広まった。これはなぜだろうか?考えられる理由の一つは日本の仏教が大乗仏教であり、僧侶はガチガチの仏教徒だが、そうでないものは強制はしないというユルさがあるだろう。しかし、儒教はともかくとして道教だってユルいわけで、これだけが理由というのは苦しい。もっと何か別の広まらずにはいられなかった理由があるはずである。

 仏教が日本で広まった理由、それは日本古来の宗教が持っていた問題点を仏教ならばカバーできるからである。その問題点とは何か。それは「死後」の世界観である。これまで立ち入る事のできなかった世界に外国から来た教えは立ち向かう事ができた。その事が日本人の宗教観に大きな影響を与えていくのだ。

つづく。

*1:今風にいったらタイタニック仏教とアヒルボート仏教――あるいは観光バス仏教とチャリンコ仏教みたいなもんだろうか。

*2:(長老の意)