宗教大国アメリカ
アメリカ合衆国にとって中東は油などの貿易において重要な場所だ。にもかかわらず、中東諸国と仲の悪いイスラエルを支援するのはなぜなのか？その理由が以下のサイトに詳しく書いてある。
2004年に私は、テキサス州サンアントニオアにあるコーナー・ストーン教会を訪ねた。この教会は信者１万７千人、運営するヘイギー牧師はキリスト教の福音派と呼ばれる人々の間で大きな影響力を持っていた。福音派とは、聖書の教えを文字通り真実と受け止め、中絶や同性愛に反対する、キリスト教の中でも保守的とされる人たちで、その数はアメリカの人口の３割とも４割とも言われている。さらにこの中でも、保守的な価値観を政治に反映させようと「積極的に選挙活動を行う」福音派の教徒が、キリスト教右派と呼ばれる。へイギー牧師はこのキリスト教右派のリーダーでもある。
へイギー牧師は、当時のブッシュ政権を強く支持し、イラク戦争も全面的に支援していた。そして不思議なことに、イスラエルの強力な支援者でもあった。キリスト教の、しかも最も保守的な代表が、なぜ異なる宗教を信じるユダヤ国家であるイスラエルを支持しているのか。日本で生まれ、浄土真宗で葬式をする家庭で育った私には理解できなかった。
彼の言葉を追っていくうちに、その理由が見えてきた。どうやら彼らの聖書の解釈にその秘密があるようだった。つまりこういうことだ。キリストは十字架にかけられて死亡したあと、復活して天に昇った。しかしこの世の終わりである終末期に、キリストは再び地上に降りてくる。これが再臨と呼ばれ、キリストが再臨すれば、その後には至福の平和な時代（千年王国）が待ち受けているとされている。しかしこの再臨には条件がある。彼らの聖書の解釈によると、その条件はユダヤ人がパレスチナの地に戻ることなのだ。キリスト教右派から見ると、イスラエル建国はまさにそのプロセスの途上の出来事とも見ることができるし、1967年の第３次中東戦争でイスラエルが聖地であるエルサレムを支配下に置いたことは、まさに再臨の道筋が進み始めた予言ともみなすことができたのだ。キリストが再臨したあかつきには、ユダヤ教徒はキリストを救世主としてあがめてキリスト教に改宗するか、改宗しないものは殺害されるとされている。
（中略）
キリスト教右派は、いわばキリスト教原理主義とも言うべきもので、もちろんアメリカ全体のキリスト教徒たちが同じ考えを持っているわけではない。しかしアメリカに住んで、その建国の伝統がいまだ生きている姿を目にするにつけ、一般的なアメリカ人の中にも、イスラエルにどこか共感するところがあるのではないかと思うようになった。精神分析学者である岸田秀氏はこう語っている。
「アメリカはイスラエルと同一視していて、イスラエルの興亡をアメリカの興亡と一体視しているからでもあります。アメリカは、ヨーロッパから追われ、根無し草になった人たちが、他民族を殺し、その土地を奪って建設した国ですが、イスラエルも、あっちに追われ、こっちに追われて放浪していた人たちが他民族を殺し、その土地を奪って建設した国で、アメリカにとって、イスラエル建国の正当性を支持することは、アメリカ建国の正当性を支持することなんですね。イスラエルが正しくないとなると、アメリカも正しくないことになる。そのため、アメリカはイスラエルが非難されると、アメリカが非難されているかのように感じ、イスラエルが滅亡の危機に直面すると、アメリカが滅亡するかのような不安に襲われるのです ユダヤ人はわれわれを殺し、われわれの土地を奪ったという パレスチナ人の非難に耳を貸すことは、滅ぼされたインディアンが地獄の底から叫ぶ 同じような怨嗟の声に耳を貸すことで、そんなことができるわけがありません」
（『アメリカの正義病 イスラムの原理病』春秋社）
アメリカについてはこんなに早く触れるつもりがなかったので、「ユダヤ・ロビー」「福音派（ふくいんは）」といったある意味アメリカの心臓部の説明を本来はしなければならないのだが、長くなりそうなので今回は省く。平たく言えばパレスチナ問題を宗教問題と捉えているのはアメリカであり、イスラエルを宗教的な意味で支援しているのもアメリカだという事である。*1
しかし、なぜアメリカはこれほどまでに宗教の影響力が大きい国になってしまったのだろうか？それは上記の後半に書かれているアメリカ建国の物語――「インディアン」との対立が深く関係している。
侵略の世界史―この500年、白人は世界で何をしてきたか― 清水馨八郎著 続篇
アメリカ、ロシアの野心と領土拡張
アメリカの領土拡張と、インディアン抹殺計画
南北アメリカ大陸のうち、イギリスの植民地となったアメリカ、カナダなど、英語圏の先住民をインディアンと呼ぶ。先にも述べたとおり、彼らは紀元前4万円から2万5000年頃、アジアから当時は陸続きだったベーリング海峡を通ってやってきた人たちで、人種的には日本人と同じモンゴロイドである。
ヨーロッパ人による北米の征服は、中南米より1世紀遅れて始まった。白人は先住民を野蛮人扱いしたが、彼らはアイヌと同じように、先祖の遺してくれた自由の天地で、大自然に抱かれて伝統を守り、天真爛漫に楽しく平和に暮らしていた。そこへ突如、白人植民者が侵入し、インディアンの運命は一変するのである。
当時、北米大陸に侵略してきた白人は、イギリス、フランス、スペイン人だった。だが、イギリス人（後のアメリカ人）と出会ったインディアンの運命が一番悲惨だった。なぜか。というのも、フランス人はもっぱら毛皮のみ関心があり、スペイン人は貴金属に関心があった。そのため、彼らにとって、先住民の抹殺は得策ではなかった。ところがイギリス人の関心は、もっぱら土地だった。
土地とは言い換えれば領土である。イギリスで食いつめた移民たちは、新大陸で広大な土地を入手できるという会社の宣伝を信じてはるばる大西洋を渡ってきたのだ。ここにたちまち先住民との土地争奪戦が始まる。インディアンにはもともと土地私有の観念はなかった。土地の権利、売却、譲渡、契約などの意味すら知らない。それをよいことに、イギリス人は無理矢理契約書に署名させ、合法的と称して騙し、脅して、次々にインディアンの土地を収奪していった。
合衆国建国以来、土地所有をめぐってインディアンと白人との間に結ばれた条約・協定は３００を超えたが、そのほとんどすべてが日ならずして反故にされた。イギリス人に都合のいい時は合法性の証文に使われ、都合が悪くなれば、即座に破り捨てられたのである。
メイフラワー号の移民をはじめ、当初の白人植民者の飢えと苦難を救ってくれたのは友好的インディアンたちであった。トウモロコシやタバコ栽培を教えてくれたのはインディアンではなかったか。白人はその恩をたちまちあだで返した。
1830年、ジャクソン大統領は、野蛮人の一掃のためと、強制移住法を制定し、すべてのインディアンをミシシッピー川以西に立ち退かせた。ところが探検や調査が進むにつれ、ミシシッピー川以西も以東に劣らぬ資源の宝庫であることが判明。かくて白人の幌馬車隊は川を越えて西へ西へと殺到した。
インディアンは、白人の度重なる約束違反に激高した。その上、インディアンの命綱のバッファローを、白人は面白半分に撃ち殺していった。かくして西部を舞台に、凄惨なインディアン戦争が繰り広げられる。映画の西部劇は、この戦争を白人に都合よく正義の戦いとデッチ上げて描いたものである。「フロンティア」「開拓」の美名の名のもとに、西へ西へと進められたアメリカ領土の拡大は、力で先住民の土地を奪うことだった。
コロンブスが来たころ、北米の先住民の人口は２００万人から５00万人で、その80〜90％は今の合衆国に住んでいたと推計される。17世紀以降、植民地建設が進むにつれて、とくに合衆国での殺戮と、白人がもたらした伝染病などによって、その数は激減し、1890年ごろにはわずか35万人まで減ってしまった。
1924年、ようやくインディアン市民権法が制定され、インディアンは、はじめて人間として認められた。
1992年、地球サミットに合わせて「先住民族世界会議」が開かれ、アメリカ・インディアンも参加。彼らは「インディアンは必ず白人に勝つ」と誓った。現アメリカ白人は、過去のインディアン抹殺の原罪におののいている。
引用が長くなったので、重要なところを太字にしてみた。前に述べたようにアメリカ人は農耕民族である。彼らにとって野性の牛は面白半分で撃ち殺していいもので、生活の糧にしている狩猟民族とは異なるという事になる。上記の情報だけだと、フランスやスペインがどうなのかは分からないが、土地を求めたイギリスは王（女王）を中心としている事から分かるとおり農耕社会である。弥生人は縄文人を駆逐した野蛮人*2だというのならば、アメリカ人はインディアンを駆逐した野蛮人と考えないと公平じゃないだろう。
アメリカ人は土地を求めた農耕民族。日本人も狩猟採集文化から農耕生活に移行していった。つまり、どちらも農耕民族なのである。しかし、アメリカ人と日本人は全く国民性が違う。一体何が違うのか？それはアメリカが「移住民族」の国であり、日本が「定住民族」の国であるという事だ。西部開拓の精神「フロンティア（新天地）」が表すように彼らはまだ見ぬ土地へ「移住」する事を望んでいた。その願望が肥大してハワイのような太平洋にまで進んでいった事はみなさんご存知の通り。一方で日本の遷都はものすごくスローペースだ。私が弥生人が渡来人だと考えない理由の一つに彼らが求めたものが新天地ではないという事もある。
私がこの分類に気づいたのはテレビのニュースで「福島第一原子力発電所事故」「普天間基地移設問題」が報道されているのがきっかけだった。恥ずかしい話だが、私はこれらの問題の本質を全く理解していなかった。「そんなに危ない場所によく住めるな。自分だったらとっくに引っ越してるわ」と、メンタリティは完全な「移住民族」だった。そんな私も「東京」という移住民族の都市へ行ってその考え方の違いに戸惑い、そこから日本とは何かという事を考えるようになった。
移住民族の神は天にいる。それゆえに彼らは土地に愛着がない。その気になったら離れる事も出来るし、奪ったその土地の歴史にも興味はない。彼らの歴史とは民族の歴史であり、その土地、その場所の歴史ではない。上述の通り、私は移住民族の感性の持ち主だった。だが、色々と個人的な挫折があり、その際に神社を回る事にした。そこで気づいた事だが、日本の神社はどこも同じ神を祭っているわけではない。もちろん同じ系列や、主神が同じ神社というのはある。だが、地方の神社にはその地方の神社の神が存在し、それは最高神である天照大御神とは同一の存在ではない。伊勢神宮が無事なら地方の神社はブッコワされてもいいというような交換可能な神ではない。オンリーワンの存在だったのである。
沖縄や福島の人には愛郷心がある。自分達の住んでいる場所の景色、特産物、文化に誇りを持つ。自分を育てた海、山、土地に愛があるからこそ、そこに神秘的なものが宿る、そこに神がいると考えるようになる。これが定住民族にとっての神――つまり定住民族の神は天ではなく「地」にいるのである。そんな彼らにとって自分達の「土地」に異物が存在する事、自分達がその「土地」から離れる事、これはありえない事なのである。この国の中心は「東京」だが、東京は下町の江戸っ子文化のようなごく一部を除いて、地方出身者や外国人の作った文化が大きな力を持っている。特に政治家、マスコミ、教育者、学者、企業人の中のエリート達は移住民族の価値観を受け入れ、それまでにあった日本の定住民族的な価値観をボロボロにしていったのである。現在の日本の問題のいくつかは、移住民族が支配し、定住民族が支えるという日本の社会構造に起因している事がほとんどである。
アメリカに話を戻すと、アメリカは上述のようにインディアンの定住文化*3を否定し、白人たちの移住文化を社会の中心として作られた人工国家である。その土地に長く住んでいた者ではなく、後からやってきた自分達の方が立場が上だとしているのである。だから彼らは移民に対して強気に出れない。自分達の方が先にいた！お前らは出て行けという主張は、インディアンを追い出した手前言い出せないのである。アイル系、ユダヤ系、ヒスパニック系、アジア系といった自分達が鬱陶しいと思う人達であっても追い出せないのである。そうして移民を受け入れまくった結果アメリカは多民族国家になり、民族ごとに正義があるという混沌とした状態になった。異なる民族をまとめるためには絶対的正義、つまり「宗教」の力が必要になったのである。
日本はご存知の通り、国籍を得るためには日本人というその土地に住んでいる人と結婚する必要がある。その土地に定住し、一生をそこで過ごす覚悟のある人で国を作っていく――これはまぎれもなく定住民族の価値観である。これは移民大国でもあるアメリカの「子供の国籍は両親の国籍に関係なく、生まれた場所」というようなものではない。
日本には親米保守という自称愛国者の右翼が存在するが、ご覧のようにアメリカ人の価値観は日本の伝統的な価値観にかすりもしない。アメリカの価値観に寄り添う事は日本の文化を壊していく事につながると考えた方が事実に近いのである。*4このブログ全体のスタンスがアレなので、信じてもらえないかもしれないが、私は別に反米ではない。アメリカはこんな国でもこの世界においては「まとも」な国に分類されるのであって、どちらかといえば友好的に接した方がよい。だが、なんでもかんでも従う必要はなく、彼らが間違った時にはハッキリと「ＮＯが言える日本人」にならなければいけない。それが「友人」に対する態度だ。我々は決してアメリカの部下ではない。
さて、アメリカに関して色々と思うところを挙げてみたが、戦後の日本はこのアメリカによって作られた。そして、アメリカ人は縄文人に恐怖する理由があるのだ。それは日本人がインディアンに似ているという事実だ。この事は以前から指摘されていた事であり、インディアンがモンゴロイドの一派である事は科学的にも分かっている事である。当然、言語や文化から考えたら別民族であるわけだが、人種的には近いのかもしれない――。この事こそアメリカが縄文人を隠すという戦後の歴史観に深く関わっているのである。
つづく
*1:アメリカの政党を知っている人なら分かると思うが、アメリカは右も左もイスラエル支援の立場を取っているという事である。
*2:（これはすでにデマだと判明しているが）
*3:とは言っても彼らの祖先も移住民族であった可能性があるが
*4:こんな事を言うと、「ああやっぱり自民党はダメか。民主党や中国と仲良くしよう」と考える人もいるが、原発事故があった時に多くの中国人が真っ先に帰ってしまった事、自分達の土地を汚しまくっている事、華僑という移住民族のエリートがいる事、共産主義という移住民族が考えた経済に親しんでいる事、彼らの苗字が姓という民族中心的なものである事、中華思想という大陸的な価値観、戦中ユダヤ人が亡命先の一つに選んだ事など多角的に見れば中国もまた移住民族の国である事は明らかだったりする。つまり、日本は右も左も移住民族の価値観ベッタリなのである。
