アイヌは何処から来たか?

 日本の原住民と言われ続けてきたアイヌ人は何者だろうか?まずは、ミトコンドリアDNAを見てみよう。

いつでもLOUPE:「アイヌと日本人の関係」−地球セミナ28-3

本土日本人,アイヌ,北海道縄文人にみられるミトコンドリアDNAハプログループの割合

本土日本人 サンプル数1312
D 36%
G 8%
M7a 8%
M7bc 5%
M8 1.5%
M10 1.5%
M 2%
A 7%
N9a 5%
N9b 2%
B 12%
F 5%
Y 1%
その他 6%

北海道アイヌ サンプル数51
D,G 41%
M7a 15%
M7bc 4%
M 6%
A 6%
N9b 2%
B 2%
F 2%
Y 22%

北海道縄文人 サンプル数44
D 14%
G 13%
M7a 7%
N9b 66%

 ネット上にあったデータを引用してみた。%の数値はグラフの長さから推測したおおよそのもので正確ではない。系統のアルファベットに変な数字がついているが、これはグループをさらに細かくしたもので、その系統の亜型と呼ばれるものである。時代が進むことにより同じ系統の人達がさらに分化したものだ。

 まず、本土日本人とアイヌのDNAを比較すると、日本人とアイヌに隔たりがあるという一般論とは異なり、実際には系統が共通している事が分かる。かなり似ている。むしろ、アイヌの祖先であるはずの、北海道縄文人アイヌの違いはかなり大きいと言わざるを得ない。北海道縄文人では半分以上がN9bに該当するが、アイヌにおいてはたった2%と本土日本人と同程度だ。一体このN9bの女性達はどこへ消えてしまったのだろうか?混血を避け、異民族と関わりがなかったのなら、これほど大きな変動をするはずがない。

 ミトコンドリアDNAの分布は現地性が強いと言われている。これは男の系統は激しい生存競争によってモテなかったり、滅ぼされてしまった場合、失われる可能性が高いが、女性の系統は支配者の愛人にされたりして、その場に残される事が多いからである。だから、ミトコンドリアDNAは滅ぼされる事なく、その場に残り続けるというのが普通だ。しかし、データは間違いなく、N9bが減ったことを意味している。

 単純に考えるならば、N9bの女性達はモテなかったか、滅ぼされたかのどちらかだろう。モテなかったとするならば、どこからか原住民の女性よりも好かれるモテ女がやってきたという事になる。滅ぼされたというのであれば、どこからか女性がやってきて縄文時代の生活を続けたという事になる。いずれの場合も混血を念頭にいれないとさっぱり説明がつかない。では、北海道縄文人にいなかった系統はどこからやってきたのか?

 Yの系統を一番持っているのはニヴフ(ギリヤーク)である。ニヴフオホーツク海近辺に住んでる北方系である。2割近くもあるという事はかなりの人々が北から流れ込んできたという事である。M7bcMABFマクドナルドグループの資料を見る限りニヴフは持っていない型である。ではこれらの系統はどこから来たか、北ではないなら南――本土日本人が持ち込んだものだろう。

 ミトコンドリアDNAは分化が複雑なので、どこからどこまで古モンゴロイドか見極めるのは難しい。しかし、北方縄文人は7割近くが出アフリカ後の遺伝子である。それが残っていないという事はアイヌも我々日本人と同じくどこからかやってきた女性の遺伝子の影響が大きいという事だ。普通に考えると「北海道縄文人が北や南と交流を持っていた」か、もしくは北海道縄文人が滅びた後に「本土日本人とオホーツク系の人々が出会ってアイヌ文化を作った」かのどちらかの可能性が高いだろう。この事を踏まえて「日本人の祖先は渡来人」だと言い張るなら、「アイヌの祖先も渡来人」と言わなければならない。

 次にY染色体だ。

Y染色体から日本人の故郷を探る

日本列島におけるY染色体亜型の頻度

アイヌ n=16
C3 12%
D2 88%

東京 n=159
C1 1%
C3 2%
D1 1%
D2 40%
O1 2%
O2b 38%
O3 14%
その他 2%

青森・静岡 n=82
C1 4%
C3 1%
D2 38%
O2b 37%
O3 20%

九州 n=104
C1 3%
C3 8%
D2 29%
O1 1%
O2b 35%
O3 24%

琉球・沖縄 n=45
C1 3%
D2 57%
O2b 22%
O3 16%
その他 2%

 出アフリカ直後の遺伝子を古モンゴロイド、O系統を弥生人と捉えるならば、確かにアイヌ人は100%古モンゴロイド、北琉球・沖縄は60%が古モンゴロイド、本土日本人は3〜4割くらいが古モンゴロイドという事になる。これを見る限りではよく聞くアイヌ琉球と本土日本人に差があるというのは一理あるようにも見える。

 しかし、注目してほしいのはC系統の分布である。アイヌのC系統はC3という亜型である。北琉球・沖縄のC系統はC1という亜型だ。どちらも全く違う型を持っている。亜型というのは系統がさらに分化したものだ。系統が人種のルーツを表すなら、亜型は民族のルーツを表すものだと考える事もできる。この亜型が沖縄と北海道で全然違う。これらのC系統は同時に日本に入ってきたのではなく、異なるタイミングでその地にやってきたという事だ。

 一方で本土日本人を見て欲しい。C1C3もどちらもいる。つまり、北海道には北海道のC系統、本土には北海道と沖縄のC系統、沖縄には沖縄のC系統という分布になっている。北海道から沖縄までグラデーションのようにきれいな分布を見せている。これでは本土だけ別人種が住んでいるとは言えない。

 原住民の可能性が高いD系統についても見てみよう。

http://taizanweb.com/science/human/movement.php

D1b(旧D2)
25,000年前、日本列島固有のハプログループ。狩猟民族。最終氷期の終焉により日本列島に孤立したようだ。アイヌ民族85%、日本本土39.8%、沖縄45.5%。小柄なネグリート体質。他民族に比べて無精子症・乏精子症が多く、性欲はあまり強くない。

 亜型の表記がD2からD1bに変わっているが、これは研究が進んで近い型同士を新たにグループしなおしたからである。引用したO1,O2,O3も今では二つになってしまっているらしい。まぁ、そういう細かい事は置いておいてこちらの引用にあるようにD系統は「性欲が強くない」らしい。

 「草食系」なんて言葉が生み出されたが、これは今の女性が性的におおらかな環境に生まれ、オープンになったから対照的に目立つ存在になっただけで、そういった人々は元々、日本古来からずっとこの日本列島にいたのである。日本では夫婦間のセックスレスが問題になっているが、性欲がそれほど強くない人が4割近くもいるのだから当たり前である。

参考:}˜^¤¢ŠEŠe‘‚̃ZƒbƒNƒX•p“x‚Ɛ«¶Šˆ–ž‘«“x

 D系統が性欲が少ない事を念頭に入れると、上図の見方も変わる。nというのがカウントした人数だと考えると、アイヌ人のD2は16*0.88=約15人。少なく見える九州人のD2は104*0.29=約30人。これだけ見ても本土のD2が少ないとは言えない。本土とそれ以外のD2が同じぐらいの人数存在したとしても、本土に別の移民を引き入れ、彼らが子供をたくさん生めばD2系統は侵略されずとも勝手に減っていくのである。これはアメリカでドイツ系がイギリス系を上回る事を考えれば不思議な事ではない。

アメリカ合衆国の人種構成と使用言語 - Wikipedia

2010年連邦国勢調査による分析
2010年の国勢調査における、自己申告による米国15大出自
順位 出自 延べ数 割合
1 ドイツ系 49,206,934 17.1%
2 アフリカ系 41,284,752 13.6%
3 アイルランド系 35,523,082 11.6%
4 メキシコ系 31,789,483 10.9%
5 イングランド系 26,923,091 9.0%
6 アメリカ系 19,911,467 6.7%
7 イタリア系 17,558,598 5.9%
8 ポーランド系 9,739,653 3.0%
9 フランス系 9,136,092 2.9%
10 スコットランド系 5,706,263 1.9%
11 スコットランドアイルランド人 5,102,858 1.7%
12 アメリカ先住民 4,920,336 1.6%
13 オランダ系 4,810,511 1.6%
14 プエルトリコ系 4,607,774 1.5%
15 ノルウェー系 4,557,539 1.5%

 言うまでもないが、渡来人による侵略で圧迫されたのなら、無精子症・乏精子症になりやすいD2は現代まで残らず滅ぶだろう。しかし実際には日本人の4割も残っているのである。つまり、O系とC系とD系は共存したという事である。日本人がものすごく平和的な民族であるという事を遺伝子と科学が証明してくれているのである。

 さて、Y染色体D系統の謎が解けた今、もう一つO系統について迫っていこう。このO系統は南方出身の採取民族なのか、縄文後期に稲作を持ち込んだ稲作民族なのか、渡来人なのか、何者なのか?この事を考えるために、次は近隣諸国のY染色体ハプログループを調べてみる必要がある。

つづく