オタク向けだけどローコンテクスト


【スマブラSP】 灯火の星

 

 まさかのカービィ主役。

 

 ストーリーモードは無いとか言われていたが、それっぽい動画「灯火の星」が公開された。74体を背にイキってるキツネ、1人で10体ぐらい倒すとか雑な計算する王子、やけに強気な姫様と、冒頭からネタ要素満載で初見時に爆笑した。

 

 カービィが主役なのは、スマブラのディレクターである桜井政博カービィの生みの親だからだろう。それに補足するならば、桜井は2003年の8月にはHAL研究所(通称:ハル研)を退社しており、最近のカービィとは関わりがない。退社前からその傾向にあったが、生みの親と育ての親が違っていたわけである。そんな桜井が任天堂と関わりを持ち続けられたのは、ハル研時代の上司である岩田聡任天堂社長になり、桜井をスマブラのディレクターに指名したからである。ハル研カービィスマブラ、桜井、岩田はセットで深いつながりがある。カービィが生みの親の元に来るのはスマブラだけで、岩田亡き今、これが最後の桜井カービィになる可能性もある。

 と、この程度の説明をしただけでもハイコンテクストすぎるのだが、実際の所スマブラというのはかなり「オタクっぽい」コンテンツで、全てのキャラクターを知っている人間なんてほとんどいないと考えられる。それでもスマブラはヒットゲームの仲間入りをしている。それは「オタク的知識を持っていなくても楽しめるゲーム」として作られているからだ。

 

 このムービーにおいて、各キャラは地味に自分の能力を使っていたいする。当然これも原作ゲームや、これまでのスマブラを遊んでいない人には分からない部分である。けれども1人くらいは自分の知っているキャラがいるはずで、そいつがどういう事になっているかを見れば、他のキャラクターが何をしようとしたかも芋づる式にわかるようになっている。私がシン・ゴジラで認める唯一の評価点の見本のような作品である。

 

 また、非常に雑誌的な作品とも言える。例えば「週刊少年ジャンプ」で、私は連載漫画全てを読むタイプだが、一般的な読者は自分の好きな2~3作品だけのためにジャンプを買って、後は読んでいない可能性が高い。そんな人達がせっかくだからと、ペラペラめくって「このマンガ絵柄が好みかも」「意外とストーリーが気になる」みたいなところが引っかかりになり、そこから興味を持つ人も出てくる。同じ雑誌に載っていればそこから興味を持つ人もいるわけで、マイナー作品やオタク向け作品ほど雑誌に載るメリットは大きい。

 

 個人的には「MOTHER2」は日本でも海外でも地味な作品だったと思うが、スマブラに「ネス」が参戦した事によって、知名度が上がったんじゃないだろうかと予想している。少年で、超能力で、任天堂のRPGとかインパクトがデカいと思う。まぁ、ネスも原作では使わないPKファイアー使うんだけど、そこは「本人ではなくフィギュア(人形)」というトイストーリー的設定を持ち込む事によって、原作にケンカを売らない形になっている点は評価できると思う。

 

  ゲーム内容に関しては細かな点で不満があったりするのだが、こういうタイプの雑誌的ゲームって他に無い気がする。やろうとしている事はかなりスゴイ事なんだという事が言いたかった。