今だからこそFF13

 ファイナルファンタジーはSFだという事は半ば常識として広まっているが、さらに細かく見ると「メタフィクション」であるということは言われないとなかなか気づかないものである。

 今回取り上げるのは「シリーズで最も駄作」との不名誉な烙印を押されたFF13である。この作品はなかなか理解されていない(ように見える)が、メタフィクションとして見ればどういうゲームだったのか分かるようになる。*1

パルスのファルシのルシがパージでコクーンとは (パルスノファルシノルシガパージデコクーンとは) [単語記事] - ニコニコ大百科

パルスのファルシのルシがパージでコクーンとは、

コクーンはパルスに浮かぶファルシがクリスタルの力で築いた都市。パルスにはコクーン同様ファルシが存在する。
聖府コクーンを統治しパルスに関わる物を排除する。クリスタルはコクーン、パルスの両方に存在する。
ファルシはクリスタルを内包しており、人類をパルスから守るためにコクーンを築いた。
外なる異物とは聖府にパージされる
パルスのファルシが生んだコクーンに属さない物。パージとはコクーン市民をパルスへ追放する聖府の政策。
ルシはファルシからビジョンによって伝えられる使命を果たせばクリスタルとなり、果たせないとシ骸になる。
召喚獣はルシを救うために現れる。ビジョンとはファルシがル……

         \(^o^)/

 上記はFF13のクソゲー性を説明する上でよく使われる表現である。一言で言えばワケワカラン造語を使いすぎてワケワカラン事になってしまっているわけだが、そもそもなぜワケワカラン造語を多用したのかといえば、この単語が「言い換え」表現だからだ。これを言い換えずにストレートにしてしまうと、身も蓋もない表現になってしまい、なんというかオシャレじゃなくなるのである。

 まず「ファルシ」とは何か?我々日本人からすると八百万の神的な何かかと思うが、この世界にはファルシより上位の存在として邪神だの女神だの「神」という存在がいる。ファルシは人より上位だが、神ではないという「宗教的な理解が難しい」存在である。だが、宗教ではなく別の見方をすればこの存在が理解できるようになる。

 神 = スクエニのクリエイター
 ファルシ = ゲームソフト
 ルシ = ゲーマー

 引用した説明のうち、世界の成り立ちみたいなものは割とどうでもいい。重要なのは「ルシはファルシからビジョンによって伝えられる使命を果たせばクリスタルとなり、果たせないとシ骸になる。」という部分である。主人公たちの悩みや葛藤などメインストーリーの大半がここに関わっている。

 「人はファルシに呪われるとルシになる」というのは「人はゲームソフトに呪われるとゲーマー」になるというメタな表現である。つまり、クリスタルというのは「ゲームをクリアしてゲームの世界を去っていった人たち」で、シ骸というのは「スクエニのゲームを途中で投げ出し批判しまくる元ファン」みたいなものである。*2

 ここだけ見ればFF13は非常に面白い表現をしている。こういう形でメタを組みこむ事で、現実世界で起こっている事と、全くの絵空事である空想世界で起こっている事がリンクし、現実と地続きの感覚で空想世界を歩く事ができるようになるからだ。

 が、上記のメタは本編でほとんど活かせていない。これまでのFFがメタとして成功する事ができたのは主人公がその世界において、アウトサイダーだったからできたのである。ゲームの世界というのは空想世界で我々の現実世界とは何のつながりもない、だからその世界に馴染んでいない人間と同じ視点から世界を見る事によって主人公とプレイヤーは一体感を得られる(感情移入しやすく)なるのである。

 FF13にはプレイヤーキャラが6人もいるが、その全てが「その世界に染まりきった」人物なのである。FF10で言うなら全員ワッカみたいなもので、ティーダがいないのである。いや、ティーダがいなくてもアーロンやルールーポジションがいればまだ安心感があるのだが、それもないので、ただオロオロする人達を眺めるだけのゲームになってしまったのである。一言で言えば脚本ミスだ。

 そもそもFF13を遊ぶためにわざわざPS3を買うような連中というのは、「喜んでクリスタルになる」ようなゲーマーなわけで、そんな人達に向けて「なんでルシになってしまったんだ、クソッ!ファルシのヤロー、クリスタルになんてなりたくねー」みたいなキャラを用意したらダメだろ、と。*3プレイヤーが世界に入り込めないまま、その世界の住人が独り言を言いまくるので、完全にプレイヤーは除け者にされている。
 
 おそらく、世界観を考えた人間は上述のメタを想定して設定を考えたが、実際にストーリーとか、キャラクターとかを任されたシナリオ側の人間はその構造を聞かされていなかったか、理解できなかったので、このようなシナリオになったのだろう。こういう事は数百人規模の大作にもなれば当然起こる事だ。これを回避したいのならば、ゼルダみたく全員でイメージを共有する必要がある。

コクーンはパルスに浮かぶゲームソフトがゲームクリアの力で築いた都市。パルスにはコクーン同様ゲームソフトが存在する。
聖府コクーンを統治しパルスに関わる物を排除する。ゲームクリアはコクーン、パルスの両方に存在する。
ゲームソフトはゲームクリアを内包しており、人類をパルスから守るためにコクーンを築いた。
外なる異物とは聖府にパージされる
パルスのゲームソフトが生んだコクーンに属さない物。パージとはコクーン市民をパルスへ追放する聖府の政策。
ゲーマーはゲームソフトからビジョンによって伝えられる使命を果たせばゲームクリアとなり、果たせないとアンチになる。
召喚獣はゲーマーを救うために現れる。ビジョンとはゲームソフトがゲ……

 ……。

*1:なお続編である13−2だの、らいとにんぐりたーんずだのは遊んでいない。

*2:うみねこのなく頃に」で言うところのヤギみたいなもん。

*3:OVAで「旧劇エヴァ」を作るようなもん。