攻略本

 私は攻略本が好きである。こんな事を言うと生粋のゲーマーからは邪道だ!と怒られるかもしれない。これから語る事はおっさんの思い出語りなので、基本無視していい。

 攻略本の良いところは、そのゲームが苦手で楽しむのが下手な人に向けて書かれているというところにある。攻略サイト攻略Wikiはどちらかというと、そのゲームにハマっている人に向けて書かれていて、何というかゲーマー向けの構成になっている。

 攻略本の魅力を思いつく限りあげていこう。

1.性格(個性)がある
 攻略本には大きく、Vジャンプ系とファミ通系がある。Vジャンプはキャラクターを前面に押し出した構成である。キャラクターの公式イラストに吹き出しを入れて一言解説を添える。攻略情報としては浅すぎてハズレそのものだが、デザインが凝っているため見るだけで楽しい画面構成になっている。マンガのノウハウを流用して作っているのだろう。ファミ通は「大丈夫。ファミ通の攻略本だよ」のフレーズで有名だったが、それぐらい「大丈夫じゃない」攻略本が多かったという事でもある。自分たちの色を出すというより、作品ごとの世界観に合わせてデザインを決めている。特に他の出版社が手を出さないようなマイナーゲームの攻略本も出して、他では聞けないような裏話が聞けるのはありがたい。ゲーム愛というものがあるからこそこういうものが作れるのであろう。他にも任天堂公式ガイドブックを出している小学館などがあるが、これはメーカーから渡されたデータをそのまま貼り付けたんじゃないかと思うほど、ノイズのないシンプルな構成になっている。マンガにすら句読点をつける小学館の糞真面目さを表しており、読み物としては物足りないが、正確であるため、資料性が高い。このようにそれぞれの出版社の強みとか目指すべきものがあるので、見比べてみるだけでも面白い。

2.あさっての方を向いた努力
 ネタ本として優秀なのは初代ポケモンの攻略本である。初代ポケモンはたくさんの攻略本が作られたが、そのほとんどが非公式なものであり、いわば制作者が想定していない遊び方をしているのである。例えば、ポケモンには160近くのわざがあるのだが、その全わざについて1ページ使ってイラストつきで解説している本などがある。たしかにどんな効果のわざがあるか?と言うことは対戦では重要になってくるが、実際に対戦で使われる技っていうのは10種類ぐらいであり、全部覚える必要はない。「スプーンまげ」みたいなゆびをふらないと出ない上に、それほど強くないどうでもいい技までわざわざ解説するという素敵さ。他にも全ポケモン(151匹)をレベル100にしてその能力値を比較するというものがある。トランセルとかコイキングを割り当てられたスタッフはどのような気持ちだったのだろうか。ちなみに個体値とか努力値みたいな裏パラメータが明らかになった現在では、これらのデータは何の価値もない。

3,悪ノリ
 よくあるのが、フェイクニュース系記事である。「ポケモントレーナーの少年がハナダジムのカスミさんにマスターボールを投げる事案が発生」とか、「誘拐か?ヨッシーが背中に幼い子供を乗せる姿を目撃」とかブラックすぎるユーモアを使ってくる。一番ひどいのはRPGツクール4の公式ガイドブックである。シナリオ作成のサンプルとして、「夜中に両親の部屋をのぞくとハダカのパパがママをいじめているように見えます。」とか「おち●ちん」「セ●●●」(ともに原文ママ)を載っけてるという酷さ。おい、ファミ通、小学生も読む本になんつーもの忍ばせてんだというツッコミしかない。ブラックじゃない(?)ネタでいうと、FE烈火の剣の支援関係をネタに魔性の女としてプリシラ、イサドラ、ルイーズを挙げてる本もある。

4.人力マップ
 今だとエクセルとかを使えば良いだけの話だが、当時はそんな便利なものなどない。マップを描くときは、金持ちは写真を撮ってそれをつなぎあわせ、貧乏なトコは手書きでマップを描くのである。そのため、非常にツギハギ感とかごちゃごちゃした感があって美しくなかった。が、そもそもゲーム画面自体も汚いものが多かったので、実はだれも気にしていなかったという。個人的に感動したのは双葉社の「スーパーマリオ64必勝攻略法」だ。3Dのマップは写真をつなぎ合わせても表現できないし、上から見下ろした簡素な2Dの図で説明する事が多いが、この本ではナナメ上から3D空間を眺めた絵を描いており、それが色合いからオブジェクトの位置関係に至るまで完璧に再現されているのである。それも各ステージだけじゃなく、ピーチ城のマップに至るまで。シビれる!あこがれるゥ!

5.実はゲームの一部
 ドラゴンクエストが海外でウケなかったのは、攻略本がなかったからではないか?と思っている。ドラクエの攻略本には本編では語られない情報としてアイテムの絵がある。「おうじょのあい」とか「みずのはごろも」みたいな言葉だけを聞いたらなんのこっちゃ?というものが絵として表現されている。こういう副次的な情報がないとドラクエって楽しみにくいゲームだったんじゃないかなぁと今更ながらに思う。逆に言えばゲーム内に攻略本を入れればヒットすると思うけど、最近のゲームはそういう方向に近づいていっている気がする。

6.夢の世界を作り出す
 ダメな攻略本はデータのみを記し、いい攻略本はデータを隠す。ソウルエッジのファンブックはキャラの設定資料について「肖像」という表現を使っている。その人物、その世界が実在であるかのような表現で、ディズニーランド的とも言える。東方文花帖ではファンアートを描いた同人作家を「撮影協力」と表現していて面白かった。ゆるキャラの中の人の事を「内蔵」と表現するようなもので、個人的にはこういうノリは好きだ。今はなくなっちゃったっぽいけどAPEって会社の攻略本も似たような事をやってる。ゼルダとかMOTHERの攻略本で、アメリカとかヨーロッパの「それっぽい写真」でゲームを説明している。このそれっぽい写真はゲーム内の画像とは別物だし、よく考えると矛盾があったりする。けれどもその世界をイメージするのには役立っている。特に「ゼル伝ドリル」と「ハイラルツアー」がアホすぎて好き。「あさっての方を向いた努力」と「悪ノリ」の究極形だろう。

 別に攻略本よもう一度!という事が言いたいわけじゃない。聞くところによると出版不況らしいので、多分日本では無理だろう。こういう文化があったのか分からない海外から出てきたら面白くなりそうだけど。ある意味では実況動画なんかが似たような役割を持っているのかもしれないけど、あれは動画が主役って感じで、副次的な攻略本の立ち位置とは違うよなぁ。今日も思いつきなので特に結論など無い。