今更すぎるがゴジラ1954を語りたい

 とある動画を見ていたらおっさんが、「ゴジラファン」にとって当たり前とか言って、「ウロコからケロイド状の肌になった」という普通の人間は気にしないようなところに注目していた。この時点で「ファン」というものを限定していてなんかイヤなのだが、続いて「ゴジラの頭はキノコ雲がモデル」という作中では全く活きていない、企画書を見ないとわからないようなクソつまんねーアイディアを前提に話していた。で、それを見ていた信者が「だからシンゴジラは正しい」とか言い出す。やはりモノホンのレイパー達は発想が違いすぎる。*1

 作品をどういう風に見ようとそれはその人の自由だ。例えばプリキュアというアニメをおっさんが見て、「なんかキラキラした衣装の女の子が素手でぶん殴る姿に性的興奮を覚える」みたいな見方をしても別にいい。けれど、このアニメのメインターゲットは「女の子」なのだ。表現規制にひっかっかるようなエロい衣装というのは基本的にない*2。女の子がギリギリで恥ずかしくないような、なりたいような衣装だからこそヒットするというのが重要なのである。*3で、プリキュアファンは基本的には後者がメインターゲットであるというのが一般認識なわけで、前者もそれなりにいるが、そっちは元々少数派というか、付随する形の存在だったというのが正しい認識だと思うのだ。もちろん、それぞれの楽しみ方を否定しているわけではない。

 ゴジラの悲劇は「初代」があまりにも真面目すぎたために、この初代ゴジラ「のみ」が正統な作品であると思われてしまっている事だ。まずこの初代の過剰な盛り上げをどうにかしないと、ゴジラについては語れないと最近は思うようになった。私にとって初代ゴジラの評価は100点満点中60〜70点で「可」の作品なのである。シンゴジラ50点なので、それよりかは少しは高いが、世間一般の評価よりは低いという感じになるはずだ。なぜシンゴジラより高い評価で、世間より厳しく採点しているのかについては別記事でそのうち述べる。*4

 例えば、存在したかわからない「神武天皇」だけが正しい血統で、継体天皇以後は血筋の違うニセモノと言われたら、自分は右翼ではないけれどもなんかカチンと来るのである。これだけでもそうとうな言い分なわけだが、その上でDNA鑑定かなんかで神武天皇の直接の子孫が見つかったとか言ってこの前まで庶民をやっていたどこの馬の骨ともしれないやつを王だと言って、今の皇室をバカにしているやつらがいたらやっぱり異常だと思うのだ。長い事続くというのは基本的にはそういう事で、ゴジラシリーズを否定されるというのは、その間金払ってグッズを買ったり、映画を見に行っていた人達、そういう人達が支えたからこそ今現在もコンテンツとして残っているものを否定する事につながると思うのだ。おおげさかもしれないが、シンゴジラファンに感じる気持ち悪さが何となく伝わってくれただろうか?

 詳しい事は後で語るとして、今、初代ゴジラを振り返ってみよう。初めて見る人が多いかもしれないから、個人的に注目すべき要点を並べる事にした。今更白黒映画なんて見たくねーよって人は参考にしてほしい。

(オープニング)
・足音と鳴き声からはじまるメインタイトル
・戦前文字(旧字)が使われている
宝田明が出演者のトップ表示

ゴジラ伝説)
・海のシーンから始まる。
・水中から光。霧状の煙(?)によって船が爆発。
・南海サルベージの尾形とヒロインの恵美子登場。デートの約束など2人はデキている
・搭乗者の家族が安否を問う
・原因不明の海難事故が続く
・大戸島の漁船(民間)が被害にあい、生き残りが大戸島に流れ着く
・じ様がゴジラの伝承を語る。昔は時化が続く時は娘っこを生け贄にしていた
・突然の嵐
・外へ出る新吉少年
・嵐の中、巨大な何かによって家が押しつぶされ壊される

(調査団派遣)
・国会答弁1
・台風ではなく生き物によるものだと主張する人々
・古生物学者の山根恭平博士登場
・山根「ヒマラヤの雪男」「海の中はどんな秘密があるのか想像もつかない」
フリゲートマーチ1
・調査団出発。恵美子「さようなら〜いってまいります」それを見つめる眼帯の男(芹沢)
・尾形と恵美子 芹沢が恵美子を好きな事を知っている尾形
・島を調査する博士達、カウンターで放射能を感知
・巨大生物の足跡に興味津々な山根
・足跡に強い放射能。トリロバイトを発見、直接触って注意される山根、水でちょいとすすいでさらに探す
・鐘の音が鳴って山に登る島民たち「どこだどこだ?あっちの山だ!」
・ジュラ記の生物としてゴジラ登場(顔だけ)
ゴジラの咆哮。一時避難する人々
・しっぽを引きずった跡と、足跡。海へと続いていた。

ゴジラ公式発表)
・国会答弁2
・200万年前のジュラ記〜白亜紀に生きていた海生は虫類〜陸上は虫類の中間の生物
・大戸島の伝説に従ってゴジラと仮に呼称
・50メートルくらいの生き物
・海底の洞窟に住んでいたが、度重なる水爆実験によって安住の地を追い出された。
・国際問題を気にして公表するなという男性議員(おそらく与党)
・公表すべきだという女性議員(おそらく野党)
・ニュースが広がり、電車内で 原子マグロ、放射能の雨、長崎の原爆、疎開のワード「また疎開かイヤだな」
ゴジラに対しフリゲート艦隊による爆撃を発表
フリゲートマーチ2
・爆撃ニュースを見る山根父娘と新吉と尾形
・機嫌を悪くする山根、自室に籠もる(横にステゴの模型)
・やってきた恵美子に対して電気を消していってくれとたのむ山根
・昭和の街
・陽気な船上パーティの最中、疎開とか言っていた連中がゴジラを目撃する
・水中で泳いでいるのに足音が聞こえるゴジラ

(芹沢の研究)
・災害本部「いかにしたらゴジラの生命を絶てるのか」
・抹殺に反対する山根。ゴジラの不思議な生命力に関心を持つ
・新聞社。恵美子の婿養子になる予定だった芹沢の話を聞きつける
・尾形と恵美子。戦争によってキズをうけた芹沢の話
・新聞記者萩原、芹沢の研究に興味を持つ
・一切口をきかない芹沢。しかし恵美子だけには語る事にした
・地下室に魚の水槽。芹沢がスイッチをいれると水槽の様子が変わり、恵美子が絶叫する
・この事は芹沢と恵美子だけの秘密に
・自宅に帰るが落ち込む恵美子。気まずい空間
ゴジラの足音が聞こえる
・尾形と恵美子。「あの事」を芹沢にいいそびれたと語る
・海面から浮上するゴジラ
・陸から銃で発砲する自衛隊
・避難する人々
・山根「ゴジラに光を当ててはいけません。ますます怒るばかりです。」
ゴジラ上陸
・正面から見た時だけ白く光る目と顔の凹凸による影と逆光で目が見えなくなるゴジラの対比
・電車を口にくわえるゴジラ。ふみつぶしながら全身するゴジラ。橋を破壊するゴジラ
・それを見上げる民衆の対比
・さすがの山根も息を飲む

ゴジラ大暴れ)
・各国の調査団が来日
・感電死をねらう軍隊
・家財を持って避難する人々
・メインタイトルのテーマと自衛隊の車
・山根家。背後ではサーチライトが空を照らす
・尾形と恵美子。山根に交際の許しを得ようと思う
・しかし、山根はゴジラを殺す事ばかり考える世間に怒り心頭だった
・尾形はその意見に反対する
・山根「貴重な研究資料」尾形「ゴジラ=水爆」
・山根「その水爆の放射能を受けながら、なおかつ生きようとする生命の秘密を何故解こうとしない!」
・結局切り出せなかった尾形と恵美子(山根を理解していない)
・臨時ニュースに驚く2人ととりかごの中で落ち着きのない鳥
・再び海から顔を出すゴジラ
・完全装備の自衛隊。戦車の照準を合わせる。
・電流作戦は失敗。砲台による攻撃も効かず
ゴジラが霧状の息を出すと鉄骨が変形(それによりゴジラがより巨大に映される)
・戦車は無視するゴジラ
ゴジラが街に上陸
・息をはいた場所が火に包まれる
・背中が光ってふたたび火を吐く。街が火の海に
・消防車でメインタイトルテーマ。しかし、消防車転倒
・逃げる人と忍び足のゴジラ
・戦車がやってくる。攻撃が効かず後ずさりする戦車
・取り残された親子、とりかごの鳥と巨大なゴジラ(この間無音でSEだけが響く)
・もうすぐお父ちゃまのところへ行くのよという親子
・時計台(11:00)を壊すゴジラ
・実況を行うアナウンサー
・続くゴジラのアクションシーン(画質悪い・戸惑いのアクションが多い・場面によって顔が違う)
・国会議事堂、テレビ塔破壊 
・カメラのフラッシュで怒るゴジラ
・死ぬ寸前まで職務を全うするアナウンサー「さようならみなさんさようなら」
・その様子をテレビで見る芹沢
・橋を壊すゴジラ
・「ちきしょうちきしょう」とつぶやく新吉少年
・メインタイトルテーマ。戦闘機による射撃。しかしゴジラに当たらない
・イライラするゴジラ。しかしゴジラのパンチも当たらない
ゴジラはそのまま海へと帰ってしまう
・「ちきしょうどうしたらやっつけられるんだ」という民衆の声

悪魔の発明
・破壊されつくした街。担架で運ばれる人々
・カウンターで放射能を測られる子供。医者(?)は首を横にふる
・担架で運ばれる女性。その子供の泣き声「ママ−」
・見かねた恵美子、尾形に芹沢の秘密を話す
・水中の酸素を一瞬で破壊。あらゆる生物を窒息後、液化する「オキシジェンデストロイヤー
・兵器として使われたら水爆と同じように使われる。社会に役立てるようになるまでは発表する気はない。
・何らかの形で強制されたら自らの死とともに封印する
・という話を聞いていたのに約束を破る恵美子
・この状況なら許してくれると楽観視する尾形
・芹沢は恵美子が来て喜ぶが、尾形もいる事を知り態度が変わる
オキシジェンデストロイヤー?とぼける芹沢。恵美子をまさかとにらむ
・恵美子の告白に落胆する芹沢
・芹沢は自室に戻り研究資料を廃棄しようとする
・男同士の取っ組み合いは水槽越しで見せない
・はずみで尾形が倒れケガをする。看病する恵美子をみて全てを察する芹沢
・芹沢「尾形許してくれ。もしこれが使用できるなら誰より先に俺が持って出た。だがいまのままでは破壊兵器にすぎない」
・尾形「いまゴジラを防がなければ」
・芹沢「オキシジェンデストロイヤーを使ったら世界の為政者たちが黙っているわけがない。武器として目をつける。」
・尾形「目の前の不幸はどうする?公表しなければいい」
・芹沢「尾形、人間とは弱いモノだ。一切の書類を焼いたとしても俺の頭の中には残っている。俺が死なない限りどんな事でふたたび使用する立場に追い込まないと誰が断言できる?」
・テレビのスイッチが入っていた「平和への祈り」。被災した人達の映像とラジオを前に希望にすがる人々。女学生が歌うシーン。「と〜く〜か〜え〜れ〜かし〜」
・目を奪われる芹沢、一瞬目をそらすが、再び見てテレビを消す
・芹沢「尾形、君たちの勝利だ。しかしオキシジェンデストロイヤーを使用するのは今回限りだ。」
・書類を燃やす芹沢。泣き崩れる恵美子(嘘くさい)
・芹沢「いいんだよ恵美子さん。これだけは絶対に悪魔の手には渡してならない設計図だ」

(エンディング)
フリゲートマーチ3
・集まる民衆、報道陣。「オキシジェンデストロイヤー」が公表されている
ガイガーカウンターゴジラの場所を知る
・芹沢は水中操作を望むが、素人を一人で行かせられるかと、尾形と二人で海へ
・巨大なカプセルに入れられたオキシジェンデストロイヤー
・平和への祈りのBGMが流れながら海底へ
・海中を泳ぐ魚たち
ゴジラは横たわり、何かに気づいたのか振りかえる
・海底を進む二人と、二人の方へ向かってくるゴジラ
・先に上へ行けと指示を出す芹沢、
・尾形「芹沢さぁーん
・芹沢はギリギリまで海に居続ける
・開かれるカプセル、ゴジラを見る芹沢。苦しむゴジラ
・船上では芹沢に呼びかける尾形
・もがくゴジラ
・芹沢「尾形、大成功だ。幸福に暮らせよ!さよなら、さよならー!
・引き上げられる前にナイフで命綱を切る芹沢
・山根「芹沢・・・
ゴジラが海中から出てくる(今までにない低く長い鳴き声)
・そして、水中で倒れて、骨になり、やがて消えてしまう。
・アナウンサー「この感激!この喜び!ついに勝ちました!
・その一方で泣く関係者。
・山根「あのゴジラが最後の一匹だとは思えない。もし水爆実験が続けて行われるとしたら、あのゴジラの同類がまた世界のどこかへあらわれてくるかもしれない」
・礼!で全員で頭を下げる。
・海と「終」のクレジット。

 あらすじこんなに書いて大丈夫か?と思われるかもしれないが、ゴジラ映画の魅力である「カットのかっこよさ」「音楽のよさ」それから一部俳優の「名演技」はこんな文章なんかでは伝えられないので、そんなにヤバイネタバレではない。というわけでこれから掘り下げていこうと思う。

*1:ちなみにこのおっさん、動画内で恐竜はは虫類とか言い出すのだが、それを言いたいがために、ほ乳類も鳥類もは虫類とした表を出すというアレさ。鳥もほ乳類もウロコなんてないわけで、学者が魚介類という言葉を使っちゃっているようなもん。普通の人間はだまされないのだが謎の話術でバカを洗脳している。

*2:ただしシリーズが長いのでなかにはひっかかるのもあるだろうけど

*3:女の子向けじゃないけど似たようなものに東方プロジェクトという作品がある。同人というエロが主体になりつつある市場で、99%近くのキャラが表現規制にひっかからない衣装を着ているキャラという驚きの作品であり、だからこそ女性ファンや海外で人気があったりするのだが、話が脱線するので止める。

*4:初代を低く評価すると「お前ホントにゴジラファンか?」と疑問を持たれそうだが、ゴジラファンだからこそ思い切ってこの評価を下せるのである。にわかだったらとりあえず人が褒めている作品を良作と言えば語った気になる。「冒険心」というものは持っていない。作品に触れている時間が少ないから当たり障りのない事しか言えなくなるのだ。