VTuber界の手塚治虫

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 気づいている人は気づいているが、肝心のこの界隈の人間が気づいていなさそうなので、あえて書くしかない。VTuberはオワコンにはならない*1だろうが、新たなブラック業界として残る事になりそうである。

 

 「キズナアイのテレビ進出」と、「バーチャルさんはみている」の二つをみれば明らかに初動に失敗している事がわかる。後者は説明不要なので、前者を語る。TVerで「のとく番」を見たが、扱いが地上波のテレビに映れない2軍、3軍芸人と同じ画面に映る存在だった。*2大御所のキズナアイがこの扱いという事は、今、チャンネル登録者も再生数も稼げないような連中は、キズナアイよりも更に下の扱いを受けるという事である。

 

  これって漫画家の手塚治虫がテレビアニメに参入した時の流れと似ていて、手塚治虫がものすごく悪い条件をのんでしまったから、現在に至るまで、アニメーターの労働環境はキツいものになった事を思い出す。アニメとか、ものすごい技術力が必要されていて、世界的に見ても注目されるコンテンツなのに、手間の割にはお金が全然入らないという状況になっている。

 

 手塚治虫みたいに複数連載を抱えるような人を基準にすると、「普通の絵描き」「普通の脚本家」は苦労するわけで、手塚治虫のやり方は手塚にしかできないのである。自分がドラクエ11を褒めてゼルダBOTWはちょっと……と思うのも、BOTWは任天堂だからできる事であって他はマネできない事だからである。同じようにキズナアイのやり方も、キズナアイにしかできず、後進が苦労するだろうなと思わせる。何よりテレビに飽きた人達が応援しているコンテンツが上位には多いため、そもそもテレビ向きの配信者が育っていないという現状もある。*3

 

 こんな事を言うとファンは「テレビはオワコン」とか言って話を逸らすヤツが現れるが、もし本当にオワコンなら、未だに「テレビアニメ」というジャンルはあるのに、「ネットアニメ」という物が全然流行らない事に疑問を感じる。*4プロのアニメーターがテレビからネットに舞台を移さないのには理由があるんじゃないか?

 

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――鳥嶋さんの活躍された時代は、『聖闘士星矢』や『キン肉マン』のようなジャンプ作品がどんどんアニメ化されて、マーチャンダイズの仕組みもどんどん整えられていった時代でもありました。佐藤さんのいた角川書店がそういう“メディアミックス”を自覚的に仕掛けたのは有名ですが、やはりジャンプ編集部にもそういう方針はあったのですか?

鳥嶋氏:
 いやいや、そんなの全くなかった(苦笑)。
 あのね、当時のジャンプの編集長は「アニメにするとキャラクターがすり減る」とか平気で言ってたんだよ。

――え、そうなんですか。

鳥嶋氏:
 本当だよ。僕なんて編集部の中でも特にアニメ化に熱心だったから、冷たい目で見られていたんだから(笑)。
 でもさ、テレビの1%は100万人でしょ。ジャンプがどんなに偉そうに300万部売ったところで、3%の視聴率にしか値しない。ところが当時の『Dr.スランプ』の視聴率は36.5%あったわけ。もう規模感が全く違うんだよ。キッチリ漫画とアニメを連携させて、組まない手はないんだよ。

 

   ちなみに、2019年1月現在で、チャンネル登録者数は1位のキズナアイ242万*5、2位の輝夜月が89万。土俵がYouTubeな以上、外国の数字を足してコレだという事を忘れてはならない。

 

 2位とこんだけ大差があり、あぐらをかいていてもよさそうな1位のキズナアイが、わざわざ畑違いのテレビに進出しようとしているのは何故なのか?「バーチャルさんはみている」とかいうドワンゴYouTubeを落とすために作ったかのようなクソアニメに有名どころが揃いも揃って出ているのは何故なのか?……普通の人間は察している。

 

  ていうかオワコン扱いされているピコ太郎のチャンネル登録者ですらまだ56万あるわけで、オワコンになった瞬間チャンネル登録をいちいち取り消すやつとかいないだろう。チャンネル登録者数とか総再生数だけじゃ見えないものもあると思う。

 

 VTuberは「優しい世界」みたいに言われているらしいが、自分はジェムカンの時も言ったようにそちらの住民ではないので、あえて厳しめにいこうと思う。例えばオレオレ詐欺があった時に「だます方が悪い」というのはその通りなのだが、「騙される方は何も悪くない。そのままの人を信用する心を忘れないでね」というのは詐欺をして得をする側だって同じ事を言うわけで、例え冷たい人と言われようと自分は「騙される方にも問題がある」という事を声を大にしていきたい人間なのである。

 

2020/4/5追記

 今見ると支離滅裂。そもそも手塚治虫を知っている層はキズナアイを見ないだろうし、キズナアイを見ている層は手塚治虫を知らない可能性が高い。手塚治虫の「何でもやります!」という姿勢とキズナアイの「何でもやります!」という姿勢が重なって見えたというのが話の芯。

 

 前に誰かが「テレビには本物は出ない」というような事を言った記憶がある。例えば漫画家でいったらやくみつる蛭子能収は出るが、鳥山明さくらももこは出ないみたいな。そこら辺が頭にあって、安売りすんなよというつもりで書いた記憶がある。*6

*1:三船敏郎の外見でモーションキャプチャーする番組とかそのうち出てくる。

*2:「のばん組」の方は思ってたよりもスタッフが有能なので、一部でしか盛り上がっていないものをかなり盛り上がっているように見せる技術がすごいなと感心した。ただ、ファンはこれによって盛り上がっているとより誤解するだろうなと思った。

*3:もちろん、こういう状況に陥ったのは全てキズナアイに任せきりだったVTuber界全体の責任なので、全く同情しない。

*4:鉄拳のパラパラ漫画しか思いつかないオレは情報弱者なのか?

*5:ゲーム専門チャンネルの122万を足しても364万

*6:2020年現在、YouTuber大手事務所UUUMとヒカキンがキズナアイと同じでテレビ進出していて、同じ道を歩んでいるように見える。これについては個人的に思うところがあるので別記事にいつか書こうと思う。