嘆き

※例え話なので、食生活に対してどうこう言いたいわけじゃありません。

 

 この国には大きく分けて「肉しか食べられない人」「野菜しか食べられない人」「雑食」がいる。雑食の中にも好みの問題で「肉しか食べない人」「野菜しか食べない人」がいる。

 

 雑食である私から見ればこの3者は仲良くなれるはずだと思っている。それぞれがお互いの食生活に文句さえつけなければ、お互いの生活は保障できるはず。幼い頃から学校では給食を食べてバランスのよい食事を心がけていたからそれが普通だと思っていた。

 

 20年くらい前に私はこの地に移住してきた。都会であるこの地はかなり偏食的というか、お菓子の家の地区とか、肉の専門店ばかりある町とか、とにかく自分の好きな物だけで居場所を作っている。

 

 来た当初はものすごく心地がよかったのである。ここでしか得られない体験があったし、欲しい物が得やすい環境があったから。でも、今は違ってきた。移住してきた人達の価値観もここで生まれた子供達の価値観も私とは何か違っている。

 

 ちょっと前に全国的な大会があった。そこでこの国の半分は「野菜派」でも「肉派」でもない事がわかってしまった。その人達が何を考えているのかはわからないが、雑食の可能性があり、同じく野菜を食べてくれる仲間であり、肉を食べてくれる仲間であるはずだ。

 

 ところがこの地の人達は「違い」に注目している。過去にされた事を根に持っていて、差別的である。野菜派の人と表面上なかよくしていたとしても、いつ「……知っているぜ。お前、肉食べてたよな?」と言われるかわからない。

 

 何を食べようがそれは個人の勝手だと思っていた。でもこの地の人達は自分の周りを自分と同じようにしていきたいらしい。彼らは「雑食」の人達を少しずつ、「肉を食べる事が悪い事だ」「かつて野菜派はこんな悪い事をしていた」みたいな下らない事を言いながら仲間を増やしていく。彼らにとって重要なのは自分たちの食生活を守る事ではなく、他人に食生活を強要する事なのだろうか?

 

 「肉派」も「野菜派」も本当にヤバいのは全国的に見たら、それぞれ1割ぐらいしかいないように感じる。けど、この地にはものすごく集まっているし、増えている。

 

 肉も野菜も食べられる事は自分にとっては普通の事であったし、全国的にも普通だと思っていたが、どうやらそうではなかったらしい。自分は「変人」らしいのだ。

 

 雑食が多いド田舎の実家に帰れば、そういう事で悩まないけど、この「国」の問題は何も解決しないという事に頭を抱えている。