左手十字キーの呪縛

 はさみには左利き用がある。ゲームのコントローラーには左利き用は無い。……そして宮本茂は左利きだという事。その宮本茂がなぜかRPGにハマれないという事をもっとよく考えておくべきだった。

 人の右半身は左脳が司っており、左半身は右脳が司っている。右手は左脳に繋がっているので、論理的な考えや計算に直結する。一方の左手は感覚や感情に直結している。

 これはかなり重要な事である。つまり我々が画面内のキャラクターを移動させるとき、右脳的な感覚や感情でキャラクターを動かしている。右手では押したか押さなかったか?というモールス信号的なデジタルな動きをしている。テトリスぷよぷよのような一見すると左で正確さを求めるようなゲームにおいても実は右手の回転動作を正確に行っているだけで、左手は素早く落とすか、1マスずつ移動させるかみたいなアバウトな動作だったりする。ヘタすると宙ぶらりんの時もある。

 右手で繊細に計算しながら移動し、左手の感情で話したり、アクションを放つという動作のゲームも作れるはずなのだが、コントローラーを左十字にしてしまった事により、そういった逆のデザインに違和を感じやすくなってしまっている。パソコンでヒットしたイースウィザードリィも実は右十字のデザインである。キーボードのテンキーは右側で、ボタンとして設定されるZXCは左に配置される。だからコンシューマを意識した作品を遊ぶ時は、手を交差させるかスーファミやプレステっぽい専用のゲームパッドを使う事になる。最初からPC前提のゲームは右十字なので、イースの半キャラずらしとか、ウィザードリィの3Dダンジョン的なああいう論理的な移動が感覚としてピッタリ合うのではないだろうか?逆に言えばイースウィザードリィがコンシューマでいまいちヒットしにくい理由もそこら辺にあるのではないか?

 スマホゲームというのは実はこの右手左手の呪縛から逃れる事が出来たから新規顧客を得たのではないだろうか?左十字に違和感を感じた人も違和感なく遊べるゲームだったような気がするのだが。なので、ガチャはオワコンになるかもしれないけど、スマホゲームはまだまだこれからなんだろうなぁ、と思った。