25時間目「ありのままの姿見せるのよ」

 メテオ編はさらに細かく分けると、女主人公の視点からその後の世界を見る「ティファ編」、メテオを止めるためにあれこれがんばる「シド編」、そしてクラウドが復帰してから最終決戦までをえがいた「クラウド編」の3つで構成されている。これはファイナルファンタジー6でやった事と同じ事なんだ。

 これまで日本のゲームファンの間では、「感情移入」できるRPGがいいゲームで、そのために主人公は無口で、無個性で、とうめいな存在がいいというのが定説になっていたんだな。これに対し「どんなに感情移入してもキミとゲームのキャラは別人じゃないか」という事をFF7は言ってしまった。ふつうならゲームはここで終わる。だけどFFのスタッフは前作「6」で他人になりきる遊びを提示した。つまり、「感情移入する主人公がいなくなってしまっても、RPGはまだ続けられるし、面白さを提供できるんだよ!」という事を示したんだ。これは「FFは従来のRPGより未来へ行っているんだ!」というちょうせんと受け取れるな。ドラクエにないものを追ってきたFFだから出来た方法だ。

 後半のゲーム展開については、あんまり細かく説明するとネタバレになってしまうから、最終決戦についての解説だけしよう。最終決戦でパーティーメンバー全員でセフィロスをたおした後、なぜかクラウドは「まだ終わっていない」というような事を言って一人でセフィロスと戦い始める。先生がはじめてこのシーンを見た時は、カッコイイけど意味がわからなくてポカーンとしたもんだ。

 このシーンを解くヒントは意外なところにあった。今は無き、スクウェアソフトの公式ウェブサイトにはこんな事が書かれている。

ファイナルファンタジーIV

ファイナルファンタジーIV』は発売後6年の歳月を経てなおそのストーリーやゲームシステムが高い評価を得ており、これまでに発売された<ファイナルファンタジー>シリーズの中でもとりわけプレイステーション版への移植が熱望されていた作品です。
 完成度の高さ・印象度の深さにおいてシリーズの中でも根強い人気と指示を得ており、多くのファンの心に残る数々の名場面を残したと評されています。
 また、『ファイナルファンタジーVII』の源流とも呼べる作品です。

 なんとFF7の源流はFF4にあるらしい。では、FF7の中にあるFF4らしい部分はどこだろうか?それは「自分との戦い」という部分だ。FF4は特さつヒーローの文脈から「悪から生まれた主人公が自らの悪に打ち勝つという」流れを引きついだ。そしてFF7もジェノバという悪から生まれたクラウドの物語だ。だからクラウドも自分の中の悪と戦って打ち勝たなければならない。この戦いはクラウド自身の戦いだから仲間が入ってくる事はできないんだ。

 この時、クラウドの中のジェノバはあこがれの存在セフィロスとして現れる。そして、このセフィロスをソルジャーのコピー技でも、マテリアという着だつ可能なアイテムでもなく、プレイヤーとクラウドがぼうけんの中で編み出した最強の技でたおすことではじめてクラウドの物語は決着がつく。ウソの自分ではなく、本来の自分で戦っていくという強い意志によってFF7は物語を閉じる事が出来るんだ。

 ファイナルファンタジーは元々アンチドラクエドラクエと逆のものを追いかけているはずだった。だけど、こうして見るとFF7が出した結論はドラゴンクエストと同じものだった。どちらもmoonが投げかけたような中世の兵士的なイメージを引きずる「勇者」を否定する物語だったんだ。そのうえで「新しい勇者像」を提供しているところも似ている。日本を代表する2大RPGがこうであるという事は、当然そのえいきょうで出来た他のシリーズも同じだと考えていい。「テイルズシリーズ」にしろ「ワイルドアームズ」にしろそれらの主人公は「兵士」ではないんだ。moonはとつぜん変異で生まれた作品でもアンチRPGでもなく、むしろ当時のRPGの流れから自然に生まれた作品だったんだ。

 そもそも、ロールプレイングゲームは「兵士を否定する」というところから出発しているんだ。ウォーシミュレーションという兵士をコマとしてあつかう戦争ごっこのゲームに、「兵隊になる事をきょ否」したヒッピーたちの好んでいた「指輪物語」の世界観をあたえて新しいゲームを作ったんだ。

 JRPGは「国のために兵隊になれ!」というゲームでもなければ、「武力を捨てて無防備になれ!」というゲームでもない。自分の周りにある大切なもののために戦うというまっとうな価値観で出来ている。すごいのは、日本のRPGプレイヤーは単純に「面白い」「気持ちいい」ゲームを求めていた。そしてそんな自分達の感性に正直に遊んだら、数多くある遊びの中からこういったまともな価値観のものを思い出のゲームとして語っている。自然な感性でいいものを選べる人達なのだという事をもっとゲーマーも日本人も自信にしていいと思うんだけどな。キミも「RPGがらんぼうなゲームだ!」なんて言われたら先生の話を思い出して、それがまちがいであることを伝えてほしい。

 今日はもう時間だな。RPGの話題はこれでいったんお終いだ。次回からは世間から白い目で見られているあのゲームジャンルについて語っていこう。おーし、解散!