アニメ業界が苦しいのは消費者のせいじゃない

 「お前らDVD買えよ」みたいな意見がアニメファンの間ではあるようだ。そういう人達に言わせるとアニメーターが苦しい生活をしているのは、アニメを違法視聴してタダで見ているやつが多いからであり、ちゃんとDVDを買っていればアニメーターも安定した生活が送れるようになるらしい。……ホントにそうだろうか?

 私も某アニメのDVDを集めていたが、アニメのDVDはものすごく高いのだ。それもボッタクリレベルに。そのアニメは4話で4000円だったから1話に換算すると1000円。30分*1で1000円である。とてもじゃないが貧乏人には堪える値段である。さらに驚くのはこの金額は他のアニメDVDと比べても高くないという点である。平均的か、下手するとこれでも安いレベルなのだ。さて、この値段設定についてわかりやすくまとめたサイトを見つけたので引用させてもらう。

日本アニメDVDが高い理由 - 考える水、その他の何か。

宮崎駿監督というレジェンドな人物がいます。この人、実は死ぬほどに手塚治虫を恨んでます。「私は手塚治虫の漫画に憧れ、漫画家を志し、アニメ業界で仕事をするようになった人間だが、アニメーター手塚治虫を心底恨む。業界をこんな風にしやがって!」との事。

日本で最初にテレビアニメーション環境を整えたのは手塚治虫氏です。しかし、当時、アニメは視聴率なんて取れない、子供しか見ない、との事で非常に価値の低いモノとして見られていました。

アニメをテレビ局で放映する際に、通常はテレビ局がコンテンツ作品に対してお金を払って、放映します。そしてCMを流したい企業は広告料金をテレビ局に支払い、その広告料金の中からテレビ局はコンテンツを制作するお金と利益を生み出します。

CMを流したい企業(*・∇・)つ(10) → (10)ヽ( ̄ー ̄〃) テレビ局

テレビ局 (〃 ̄ー ̄)ノ(5) これで作品作って♪ → (5) ヽ(^∀^:) 制作会社

というのが通常なのですが、アニメに市民権が無かったために、手塚治虫氏は「アニメを作りました。放映するためにお金も払います。だから放映して下さい!」と、逆転の関係から日本アニメーション産業はスタートしてしまったのです。

手塚治虫氏の執念というか、土下座してでもアニメをテレビで放映したい!という強い重いから、こんな事になったアニメ業界。正確に言えば恐ろしく安い金額で放映権をテレビ局が買取り放映したのが事実ですが、関係の強弱から言って、基本的にはこのような構図によって日本アニメーションがスタートし、非常に低賃金での産業が成立してしまいました。

そして現代、この状況はあまり変わっておらず、アニメコンテンツに対してのテレビ局、広告企業共に評価はあまり変わっておりません(現実には少しづつ着実にアニメの評価は上がってきてるけどね)。アニメ制作会社はアニメを作るお金がない。この状況でひねり出した策は、作品の制作費はアニメDVDで資金回収するというビジネスモデルです。

本来であればCMを流す企業が良質なコンテンツを作るために制作費を渡すのですが、アニメの場合にはそれが無い(微々たる金額)。なので、DVDの金額に制作費がそのまま反映され、結果、1枚6000円などの高い金額になってしまっています。ある意味、アニメ作品はユーザーの支えによって成り立っていると言っていいでしょう。本来であれば、企業が出すべきお金をユーザーが大きく負担しているのですから。映画が1本2000円程度だとすると、6000円のアニメDVDは、4000円分、制作会社を支えている、寄付しているようなものです。この金額を見て、CMを出す企業ってすっごいお金を払っているんだなぁと見るか、アニメって本当にユーザーで支えてるんだなぁと見るか。それは人それぞれだと思います。

 まぁ、有名な話なので、知っている人は知っている話である。つまり、制作費がものすごく安いからお金を回収するために高い値段をつけているというのが答えだろう。ただ、この話について思う事はそもそも制作費の安さについて手塚治虫が批判されるのは筋違いもいいとこだという事である。上記のブログでも記述されている通り、手塚治虫が低賃金で仕事を引き受けたのは「アニメに市民権が無かったため」だ。手塚が市民権をなくしてしまったのではなく、最初から無かったからというのが正しい。手塚がいなかったらアニメをテレビで見るという環境自体がなかったかもしれない。*2

 さて、アニメをビジネスとして考えよう。DVDが売れないと*3……と言っている人は漫画の単行本やゲームソフトのロムとアニメのDVDが等価であると思い込んでいる。しかし、これは違う。なぜならばアニメは「テレビ」という媒体を通して無料で見るものであり、漫画雑誌やソフトウェアという有料の媒体で楽しむものとは最初からビジネスモデルが違うからだ。
 
 アニメをゲームやマンガ等のオタク作品としてではなく、「テレビ番組」として考えれば分かる。どんなに「イッテQ!」が面白くてもそれをDVDで買って見るという人は少数派なはずだ。テレビというのは時間効率の悪いメディアである。本には速読、ゲームは実力があれば早く解ける、音楽にはトラックをスキップするという風に時間を自分でコントロールできる。だが、テレビは引き伸ばされたらそれを見るまでは目的の場面までガマンしなければならない。クイズミリオネアのみのもんたの間とか、続きはCMの後でとか現代においてはムダ以外の何者でもない。が、それでも我々がテレビを見てしまうのはタダで見れるからだ。どんなに腹立つ内容を報道されても、くだらない番組でもタダなら文句はない。しかもテレビ放送はすぐに過ぎ去るもので、自分の好みに合わなくてもさっさと捨てられる。この手軽さこそテレビが他のメディアよりも長生きな理由である。

 テレビは視聴者からお金を取れない。スポンサーからお金を取るのだ。だから一番お金を稼ぐ方法とはスポンサーに気に入られる事が第一であり、視聴率を上げるためにユーザーのニーズを満たす番組を作る事は第二の目標でしかない。世の中にはDVDが売れてなさそうなのに長生きのアニメがある。例えばアンパンマン遊戯王は本当にDVDの売り上げでもうかっているんだろうか?という事を考えていただきたい。これらのアニメは視聴率が低かろうがDVDが売れなかろうが直接影響はない。なぜならばそのアニメを見る事で関連グッズの収益が上がれば元が取れるわけで、今風に言えばステマアニメだからだ。ガンダムなんかも本当は「玩具を売らせるために面白い設定やストーリー考えてね♪」という企画なのだが、気がつけばビデオで繰り返し見る事を前提のオタク向け作品という認識になってしまっている。当時のテレビ局と今のファン層の捉え方が全然違うのだ。

 子供向けアニメは関連グッズで収益がもたらせればよかった。もっといえばDVDも関連グッズの一つに過ぎない。DVDの他にちゃんとした収入源さえ作れれば売れなかろうが違法視聴されようが問題ない。結局、アニメが生き残るためには、無料放送をやめて衛星放送のみでの配信に切り替えるか(かつてのオタク向け)、関連グッズを売らせるためのステマアニメを作るしかない(かつての子供向け)。前者がNHKみたいな先に課金で成り立つビジネスで、後者が民法のスポンサーからのお金で成り立つビジネスだ。アニメーターといえど子供ではなく、一人前の大人なのだからちゃんとしたビジネスの勉強をすればどちらかを選ぶしかない事ぐらいわかるだろう。*4

 だからこの問題の張本人は消費者ではなく、「中途半端にプライドを持ったアニメーター」と「アニメが好きで仕事にしている癖に強気になれないテレビ局プロデューサー」に責任がある。

 前者は分かりやすくいえば「にわか」に媚び過ぎた事が原因である。これまでアニメに興味ないようなあんちゃんねーちゃんや海外のオタクみたいなカッコイイ系にモテたいがために「アニメは文化だ!映画を超えた!ステマ氏ね」みたいな見栄をはった結果アニメ業界は苦しくなったのだ。そういう層が「テレビアニメを見る目」は上記のイッテQと同じ目で「面白いか面白くないか」を見ているだけでお金を出すべきか出さざるべきかを考えているわけではない。こういうカッコイイ系のお客は作品の看板になることはあっても収入源になる事はない。本来のユーザーを見限った時点で業界が苦しい生活になるのは至極当然。アニメなんて子供向けでしょ?オタクっぽくね?みたいな事を言われても自信を持ってその商売を続けていればよかったのに、やめて新しい商売をしたから失敗したようにしか見えない。

 後者は手塚治虫の時代から現代までテレビ局側が何も変わろうとしていないのが問題だ。いや、アニメの放映枠自体は増えているように見えるから多少は頑張っているのだろう。しかし、結局のところ局のプロデューサーが頑張っても放映枠という名の「空き時間」しかもらえず、制作費をもらえないのが現実。世界中からどんなにアニメが注目を浴びようともテレビ局とスポンサーという資金源が変わらない限り生活は変わらないわけで。

 この問題を突き詰めるとなぜニコニコ動画は赤字続きなのに、無料ユーザーを外さないかというという事にもつながるが話が長くなるので割愛しておこう。いずれにしてもDVD買わないやつはアニメファンじゃないという意見は、アニメーターたちがせっかく苦しい思いをして得た「俺、グッズとかDVDとか買わないけど、でもさ、アニメって好きなんだよね」という「客」を放り出す事にしかならない。アニメ業界がそれを望むのなら私はこれ以上何も言わないが。

 ……最後に一言、DVD値下げしろよ。

*1:実際には20分前後

*2: この話をややこしくしている原因の一つが宮崎駿だが、私はそもそも宮崎を信用していない。バカでうそつきだからだ。ちょいと調べれば分かることだが、宮崎駿はエリートの家系でいわゆるお坊ちゃんである。そんなお坊ちゃんがアニメーターという不安定な職を選んでいるのだ。京大出てお笑い芸人になるようなもんである。宮崎がアニメの製作環境に苦言を申しあげたくなる気持ちもわかるが、その環境を変えるのは、実力もあって反体制の自称左翼であるアンタだろうがと言いたい。ところが自分はテレビから離れ、映画の世界へ行ってしまい、製作者やアニメファンへの意見は言うくせに、テレビ局への批判は一切出てこない。これでは、才能だけある坊ちゃんが貧しくてバカなやつが多い業界に入って「俺スゲー!」しているだけである。……このままいくと駿監督の名誉を傷つけるような罵詈雑言を続けてしまいそうなので話を戻すが、スタートがどうであれ、後から出てきた人間が「こんな低賃金では出来ません!」と突っぱねればよかったのだ。それがなぜできなかったのか?それは後から出てきた人間が作ったものが「手塚以下」だったからだ。宮崎の恨み辛みも私から言わせれば「あなたのような実績も信頼もあり、一線で活動されている人が頭を下げられたのでは、我々の出る幕がない」という「敗北宣言」にしか見えない。

*3:そもそもDVD自体いつ出てきたんだよって話。VHSが売れないからアニメが売れないって時代はあったんだろうか?

*4:ちなみに宮崎駿が映画へ行ったのは前者を選んだからです。