「四月一日さん家の」はオススメできる

1.非技術屋の映像

 「バーチャルさんはみている」のダメだったところ改善したような作品である。多分だけど、バチャみては「運営」が映像を作っていたんだと思う。*1V運営の作る映像って感覚的にMMDとかYouTuberとかの映像に近い。だからところどころに素人っぽさを感じる。今作は映画とかテレビドラマに使われてきた普遍的な映像表現とかを使っていたのでものすごく見やすかった。

 

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 自分が気にしていた「動き」なんだけど、VTuber独特のゴテゴテした衣装じゃなくて、現実にあり得るレベルの衣装にした事で、動きの演技がわかりやすくなっている。あとキャラクターが必要以上に動き回らず、カメラが動く事で演技しているのもいい。技術屋ってやたら動かしたがるから、やりたいようにやらせると映像がうるさくなりがちだったりする。

 

 「何を見せるか」だけじゃなくて、「何を見せないか」も表現。*2これは宮崎駿庵野秀明たつきも出来る事。バーチャルYouTuberって見せる物が多ければ多くの情報が届くと思っているかもしれないけど、時には断腸の思いでカットする事も大事だと思う。こういう「見せない表現」があるって事をわかっていない人が多いように感じる。

 

2.前提知識を必要としない

 VTuberとして登場するのではなく、ドラマ用の登場人物として3姉妹が出てくるので、作劇だけでキャラクターを表現できる。しかも3人のうち1人はこのドラマでデビューしたようなものなので、ほとんどの人が初見である。知識量でマウンティングしてくるようなやつがいない環境になっている。話の内容も基本的に1話完結なので、途中から見てもそんなに分からない事が無いと思う。

 

3.笑い声は補助輪

 否定的な意見としてアメリカのコメディドラマにありがちな「笑い声がいらない」という声があった。*3ただ、このドラマはVTuberを普段見ていない人に向けて作られていると考えられる。

 

 VTuberって表情や動作での微妙な演技っていうものが(今のところ)技術的に難しい。なので、その演技が「大げさに誇張したもの」なのか「ガチの演技」なのか視聴者は判断がしづらい。今回このドラマは「シリアス」だけど「笑える」という*4複雑な脚本を用意しているのである。もし、笑い声がなかったら、声の演技だけでどういうシーンなのか読み取らないとならないが、下手すると「シリアス」だけを受け取ってしまう人もいるかもしれないのである。

 

 VTuberというよくわからないものを紹介するのに、「シリアス」に描いてしまうと客層をさらに絞り込んでしまうわけで、幅広い人を取り込むためには「笑い」が必要だし、技術的に制限がある中で出来る演出は「観客の笑い声を入れる」事だったんだと思う。

 

 ついでに言うと「シリアスな笑い」はシリアス方面にもギャグ方面にも話を広げやすい。室内でのシーンが多く、場所移動でドラマを作れない以上、こういう設定や味付けをしてくるのは上手いなと思った。

 

4.キャスティングがいい

 「現実にいてもおかしくない」と「アニメっぽい」の中間。京アニ系な感じ。3人のキャラデザ違うはずだけど、絵柄的にそんなに違和感がなかった。なぜかバランスがいい。

 

 YouTube上で人気なやつらはYouTubeで動画出していた方が客のニーズに合うわけで、テレビに出てくるのは違う客層を取り込みたい人達であるべき。*5「バーチャルさんはみている」はそこら辺考えずにチャンネル登録者上位を集めただけなのがよくなかった。*6

 

5.演技しやすそう

 ドラマであるという建前があるので、YouTube上と設定やキャラが違っても平気。役に入り込みやすそう。

 

6.とにかく見ろ

 VTuberのテレビ出演についてまだ何が正解かわからない段階なのであって、100点を取る必要はない。挑戦や試行錯誤という意味ではかなり頑張っていると思う。あと、今作に限らずVTuber使っている番組はスタッフがなぜか優秀だって事に気づいた。*7

*1:ユニティちゃんだけ映像のクオリティが違っていたし、エンドクレジットにも運営っぽい名前が並んでいた。

*2:マンガやアニメの「鼻を描かない」ってのは表現として認められているでしょ?

*3:まぁ、たしかに日本のコメディは効果音に演技させるから違和感大きそうではある。

*4:私世代で言うと木更津キャッツアイみたいな

*5:みみたろうみたくYouTubeだけでは広がらなかったのにテレビでヒットする人がいる。

*6:有名YouTuberとかあんまりテレビに出ないっしょ。YouTubeとテレビでは客層が違うという事。

*7:と、同時にバチャみての戦犯はドワンゴだと確信した。